モモの読書感想文031〜『デューク』江國香織

 

モモです。

ここ数日の花冷えがつらくて仕方がないです…この寒さで桜が長く持つといいのですが。

でもでもやっぱり早く暖かくならないかな。そろそろタイツを脱ぎたいです~

 

今回の読書感想文は・・・

さてさて、今日も書いていきます。今回の課題図書はこちらです。

『デューク』 著:江國香織

 

デュークが死んだ。わたしのデュークが死んでしまった──。たまご料理と梨と落語が好きで、キスのうまい犬のデュークが死んだ翌日、乗った電車でわたしはハンサムな男の子にめぐりあった……。

『デューク』は短編集の『つめたいよるに』に収録されています。

デビュー作『桃子』を含む21編を収録。

 

 

前回の感想文はこちら。

 

 

最後の一日

飼っていた犬が死んでしまった次の日、アルバイトにでかけた「私」の不思議な一日を綴った物語。

たまご料理とアイスクリームと梨と落語が好きな、初夏が似合うデュークという名のムク犬が老衰で亡くなり、ひどく落ち込んでいた「私」が「びょおびょお泣きながら」アルバイトに向かうため電車に乗ると、あるひとりの少年に席を譲られます。

 

「どうぞ。」

無愛想にぼそっと言って、男の子が席をゆずってくれた。十九歳くらいだろうか、 白いポロシャツに紺のセーターを着た、ハンサムな少年だった。

「くらい」と言うわりに、やけに限定的な十九歳という年齢。

 

「コーヒーごちそうさせて。」

電車からおりると、わたしは少年に言った。

「私」は少年を喫茶店に誘い、いっしょにオムレツを食べ、温水プールで泳ぎ、アイスクリームを食べ、落語を見ます。(アルバイトはずる休み。)

 

察しの良い方はこの辺でははん、と気がつくと思います。

 

そう、この少年はデュークです。

 

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僕もとても、愛していたよ

別れ際、少年にキスをされた「私」は、そのキスがあまりにもデュークのそれに似ていることに驚きます。

 

「今までずっと、僕は楽しかったよ。 」

「そう、私もよ。」

下をむいたまま私が言うと、少年は私のあごをそっともちあげた。

「今までずっと、だよ。」

なつかしい、深い目が私を見つめた。 そして、少年はわたしにキスをした。

わたしがあんなにおどろいたのは、彼がキスをしたからではなく、彼のキスがあまりにもデュークのキスに似ていたからだった。ぼうぜんとして声もだせずにいる私に、少年が言った。

「僕もとても、愛していたよ。」

もちろん、「私」は少年に一度も ”愛している” とは言っていないんですよね。でもきっと生前のデュークにはたくさんたくさんそう伝えていたんだな、ということがわかる一言です。

きっとデュークはずっとこの一言を「私」に伝えたくて、それで少年の姿を借りて伝えにきた。ありがとう、ではなく、愛している、と。

感謝ではなく愛だったということが、ふたりの関係性が対等だったことを表しているように思います。

一緒にアイスクリームを食べたり、落語を見たり、キスをしたり。まるで恋人のように寄り添って十九年間(おそらく)を生きてきたのだろうな。

 

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初出から単行本化にあたって

『デューク』の初出は「飛ぶ教室」という雑誌でしたが、それから『つめたいよるに』の単行本に載せるにあたり、多くの漢字表記をひらがな表記に変更したそうです。

『デューク』に限らず、江國香織さんの作品は文章だけでなく文面もやわらかいんです。ひらがなのつかい方が絶妙で。

ページを開いて目で見るだけでも、ひらがなの余白から江國香織らしさを感じる、ある意味強烈なシグネチャーを持つ稀有な作家さんです。

 

『つめたいよるに』には、『デューク』のほかに20編の短編作品が収録されています。どれも美しくて透明で、宝箱のようなまさに珠玉の一冊です。おすすめ。

 

江國香織作品の感想文はこちら。

 

ペット、特に犬を飼ったことがある人にはかなりぐっとくる必携の作品です。

愛犬のなつかしい、深い色の目を思い出して読んだら、本当に泣けてきます…

 

それでは、また。

 

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