モモの読書感想文042~『お嬢さん』三島由紀夫
モモです。
オリラジのあっちゃんがyoutubeで投稿している「エクストリーム文学」が面白いです。
三島由紀夫の『仮面の告白』の動画を見て、久しぶりに読みたくなったのですが…
『仮面の告白』は引っ越しの際に手放したんでした…残念。
近現代の作品をごっそり売っちゃったんだよね。なんであんなことしてしまったんだ…
ということで、唯一手元に残っている三島作品『お嬢さん』について今日は感想文を書いていこうと思います!
今回の読書感想文は・・・
『お嬢さん』著:三島由紀夫
大海電気取締役の長女・藤沢かすみは20歳の女子大生、健全で幸福な家庭のお嬢さま。休日になると藤沢家を訪れる父の部下の青年たちは花婿候補だ。かすみはその中の一人、沢井に興味を抱く。が、彼はなかなかのプレイボーイで、そんな裏の顔を知り、ますます沢井を意識する。かすみは「何一つ隠し立てしないこと」を条件に、沢井と結婚するが…。
前回の感想文はこちら。
1960年代に『若い女性』というOL向けの雑誌で連載されていた本作。
『若い女性』って…ネーミング。(笑)
ターゲット層が若い女性だったということもあって、ほかの作品とはだいぶ作風が違うな~と感じます。
ライトで読みやすくて、エンタメ色が強い印象。
かすみの結婚観
あなたって矛盾してるわね。人生にはドラマチックな夢を抱いていて、結婚には実際的な考えを持っているのね。
当時の「いいとこのお嬢さん」といえば、大学を卒業したらすぐに結婚することが珍しくなかったようです。信じられないね…。
かすみ自身も、沢井との結婚が決まってすぐに大学を中退します。
まだ恋愛経験もない少女でありながら身の回りには花婿候補の男たちがうようよしていて、友だちといつも頭でっかちな恋愛話をしている。
苦しみを作り出すのは自分
沢井という伴侶を手に入れたかすみでしたが、結婚後はずっと沢井が不倫しているのではないかと疑心暗鬼になります。
すっかりそう思い込んでしまっているために、すべてが疑わしく思える。
不自由なく育てられたかすみが無意識に求めていた「ドラマ」は、悲劇という形で現れました。かすみ自身の手によって。
苦しんだかすみは、自分が浮気していると沢井に思わせることで復讐を果たそうとするのです。
浅子とかすみの対比
どうしてあなたは叫ばないの? 泣かないの? 吠えないの?
思い切って、景ちゃんの顔にオムレツでもぶっつけてやらないの?
あなたのヤキモチは小細工ばかりで醜いわ。そんなの、ほんとに女の滓だわ。
沢井の元彼女である浅子はかすみの存在を知って苦しみ自殺を図りましたが、結局はどん底から這い上がり、今では新しい恋人と結婚間近。
苦しみや悲しみを存分に感じて、感じ切ったからこそ前に進むことができた浅子。
一方かすみは、苦しみに蓋をして復讐をすることでその傷を癒やそうとしていた。浅子のようにかっこ悪くうろたえることができなかった。
そんなかすみに浅子はお説教をするのです。
かすみちゃんの曲がった解釈
あれほど見下していた浅子から受けるお説教が、かすみの目を覚まさせるのですが…
どうでしょうか、このかすみの解釈。
浅子は、あのバルコニイへ飛び出して行って投身自殺をしようとしたときの迫力を、今の陽気な上機嫌の底にも、見事に折りたたんでいた。それこそこの女の本然の翼だった。かすみもそういう翼を今こそ持たねばならぬと思った。
浅子の台詞はかすみの胸には届かず、かすみには晴れ晴れとした浅子の様子だけが印象に残る。
かすみも、浅子に倣って自分の思いを心の中に折りたたもうとする。自分の感情ときちんと向き合った浅子とは根本的に違うのに、それに気が付かない。
悲劇のヒロインを目指していくようなかすみの様子、なんだか嫌だなぁ、こういう女子いるよなぁ、と思いました。(私も含めて。笑)
宴のあと
同時期に発表されて、何かと比較されている三島由紀夫の作品『宴のあと』
有名な作品だけどまだ読んだことないんです。
こちらは『お嬢さん』よりもずっと評価が高い作品のようですが…
普段純文学をあまり読まない人なんかには『お嬢さん』のほうが読みやすいし面白く感じられるのではと思います。
というか、三島由紀夫自身もそれを目的にして書いた部分もあるのかな?と思いました。若い女の子向けの雑誌に連載していたくらいだしね。
三島由紀夫デビューにおすすめの作品です。
それでは、また。
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