モモの読書感想文039~『芋粥』芥川龍之介

モモです。

 

今日も芥川龍之介シリーズ。

 

前回の感想文はこちら。

 

今回の読書感想文は・・・

『芋粥』著:芥川龍之介

明治・大正期の文豪、芥川龍之介。

人間味があってシニカルな作風が大好き。

すでに没後90年以上が経っているので、青空文庫でも読めますよ。

 

『芋粥』あらすじ

平安朝時代。背が低く、鼻が大きいさえない男がいた。男の夢は芋粥を飽きるほど食べること。

ある日その願いを耳にした藤原利仁の豪邸に招かれその夢がかなうことになったが、いざ大量の芋粥を前にした男はみるみる食欲をなくし、ここに来る前の自分に戻りたいと力なく思うのだった。

 

なぜ男は食欲を失ったのか?

あれほどまでに恋焦がれた芋粥を前に、なぜ男は食欲をなくしてしまったのでしょうか?

それは男が語っている心境から察することができます。

 

五位は、芋粥を飲んでいる狐を眺めながら、此処ここへ来ない前の彼自身を、なつかしく、心の中でふり返った。それは、多くの侍たちに愚弄されてゐる彼である。(中略)色のさめた水干に、指貫さしぬきをつけて、飼主のない尨犬むくいぬのやうに、朱雀大路をうろついて歩く、憐むき、孤独な彼である。しかし、同時に又、芋粥に飽きたいと云ふ慾望よくぼうを、唯一人大事に守っていた、幸福な彼である。

 

彼が落ち込んでいたのは、夢をなくしたことが悲しかったから。

そして結果的に、自分の好物までなくしてしまったことを、悲しんでいたんだと思います。

 

本当の夢はほかにあった?

当時はこれが、上は万乗ばんじょうの君の食膳にさえ、上せられた。従って、吾五位の如き人間の口へは、年に一度、臨時の客の折にしか、はいらない。

 

当時の芋粥は、本編内でも説明されているとおり、山で採れた芋を甘い汁で煮込んだものです。

高価な食材が使われているわけでもなく、作り方に手が込んでいるわけでもない。

そんなものになぜそれほど執着したのかというと、おそらくそれが貴族の食事であったからだと思います。

つまり男が強く執着していたのは芋粥そのものではなく、貴族たちの生活や地位だったのかもしれませんね。彼自身も気がついていなかったのかもしれないけれど…

 

今昔物語をデフォルメした芥川龍之介

実はこの『芋粥』には、もとになった作品があります。

今昔物語』にある『利仁将軍若時従京敦賀将行五位語としひとのしょうぐんわかきとき、きょうよりつるがにごいをいてゆきたること』という説話です。

しかしこの『今昔物語』では、男は芋粥を嫌いになることはなく、それどころか藤原利仁邸で様々な贈り物を手にしてウハウハです。

人に嘲笑われても、馬鹿にされても、懸命にまじめに生きていればいいことがあるよ。という教訓。

 

芥川龍之介のおもしろいところは、それをすっかり別の物語に作り上げてしまったところです。今昔物語の男も、芥川龍之介が描いた男も、境遇は同じなのに真逆の結果になってしまった。

でもどうでしょう、なんだか芥川龍之介の『芋粥』のほうが、人間らしさを感じませんか?

 

こういう皮肉さ、クスッとさせてくる感じが、私が芥川龍之介を好きな理由です。

 

それでは、また。

 

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まだあるよ、芥川シリーズ。

 

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