モモの読書感想文018~ 『窓の魚』西加奈子
こんばんは。モモです。
だいぶ陽がのびてきましたね。うれしいなぁ。
そろそろコートにもニットにも飽きてきました。早く暖かくならないかなぁ。
さてさて、今回の課題図書はこちら。
- 文庫: 214ページ
- 出版社: 新潮社 (2010/12/24)
- 言語: 日本語
- ISBN-10: 4101349568
- ISBN-13: 978-4101349565
- 発売日: 2010/12/24
- 単行本:¥497
温泉宿で一夜を過ごす、2組の恋人たち。静かなナツ、優しいアキオ、可愛いハルナ、無関心なトウヤマ。裸の体で、秘密の心を抱える彼らはそれぞれに深刻な欠落を隠し合っていた。決して交わることなく、お互いを求め合う4人。そして翌朝、宿には一体の死体が残される──
ネタバレはしないように書いていきますね。
震えるほど良い作品だったので、この記事がきっかけで読んでもらえたらうれしいな。
前回の感想文はこちら。
「きっと好き」
ある日の仕事終わり、なんとなくまっすぐ帰りたくないな~と思ったので本屋さんに寄って目についたこの本を買い、スタバで読み始め、最後までそこで読んでしまったこの本。
214ページという短編とはいえ、気づいた時には夜が深くなっていました。
世界観がね、きっちり作りこまれています。読み手を離さない。たとえ次の日朝が早くても!
冒頭に、山間に流れる小川の描写があるのですが、その川の様子だけでこの本の雰囲気・世界観がわかります。
川は山の緑を映してゆらゆらと細く、若い女の静脈のように見える。紅葉にはまだ早かったが、この褪せた緑の方が、私は絢爛な紅葉よりも、きっと好きだ。目に乱暴に飛び込んでくるのではなく、目をつむった後にじわりと思い出すような、深い緑である。
しずかで、華やかさはないけれども心にじわりと残る。ゆらゆらと頼りなく儚いのに、それでいて深い。この作品の世界観そのものです。
あと、「きっと好きだ」って、ちょっと違和感がありませんか?
実際に見たものに対して、自分はこういう景色が「きっと好き」だと思う人っています?
この1ページ目で感じた違和感を、私は物語終盤までそのまま持ち続けることになります。
そしてこの描写の主、「ナツ」のことをきちんと知ったとき、この「きっと好き」の意味にはっと気が付く。
決して目をひくような凝った表現ではないのに、読者の心にちょっと引っ掛かるように書かれたこの文章…しびれるーーー!
ほんとこういうのたまらないです。
真実は、藪の中
冒頭に記載した裏表紙の説明書きにもあるように、主人公4人が泊まった宿ではその晩、一体の死体が残されます。
4人以外の部外者の証言が書かれるものの、その内容は微妙に食い違い、真実はわからないのです。
この展開は芥川龍之介の『藪の中』を彷彿させるけれど、なんというか、ちょっと趣が違う。
『藪の中』では意図的に嘘をついている人がまじっているせいで犯人がわからない、という印象を受けた(あくまで私の個人的な感想です)のだけれど、この『窓の魚』では全員が真実を語っているように感じました。まあそもそも誰が死んだのか明らかではないので同列に考えてはいけないのかもしれないけど…
真実は、いつもひとつ! ではなく、実際のところは当事者の数だけ存在してしまうものなんだよね。
それはそうと久しぶりに『藪の中』を読み返してみましたがやっぱり芥川龍之介ってめちゃくちゃ面白いですね。『地獄変』に出てくる炎の描写、父の狂気もいいし、『蜘蛛の糸』の仏さまのシニカルさもすごくいい。
そういえば大学の推薦入試では『芋粥』についての小論文を書きました。お題は忘れましたが、試験前日にちょうど芥川全集を読んでいて(勉強しろ)、うまくお題と合致したものだから自分の強運さに震えた記憶があります。
最後に
西加奈子さんて美人さんですね。川上未映子さんも美人だし、美人の作家ってもうそれだけでいたく憧れます。
感想文の最後が「作者が美人」って変な話だけど。
それはさておき、この作品を読んで西加奈子さんのふり幅の広さに驚きました。
こういう純文学色が強い作品、とても好きです。『サラバ!』や『通天閣』の印象とはだいぶ違います。
西さん、こういうのも書くんだ! と驚かれると思いますよ。おすすめです!
それでは、また。
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2件のフィードバック
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