モモの読書感想文021~『蜘蛛の糸』芥川龍之介
こんばんは。モモです。
今回の読書感想文は・・・
『蜘蛛の糸』 著:芥川龍之介
『蜘蛛の糸』 著:芥川龍之介
- 文庫: 128ページ
- 出版社: 新潮社; 改版 (1968/11/19)
- 言語: 日本語
- ISBN-10: 4101025037
- ISBN-13: 978-4101025032
- 発売日: 1968/11/19
言わずと知れた芥川龍之介の名作。
作品を読んだことはなくても、絵本やアニメで見たことがあるという方も多いのではないでしょうか?
幼い頃、家に蜘蛛が出たときに母が「蜘蛛は殺しちゃだめ」と、この話をしてくれました。なんでもないことほど、意外と頭の中に残っているものです。
なので話自体は知っていたのですが、しっかりテキストとして読んだのは大学生になってからでした。
大人になって読んでみると、だいぶ印象が違っていて驚いた。
仏教色が強い教訓のある話かと思っていたけれど、こんなに皮肉な話だったのか…と。
だいたい芥川龍之介ってシニックな作風が多い作家だものね。
『蜘蛛の糸』は、ざっくり言うとこんなお話でしたね。
悪党カンダタは死後地獄に落ちたが、彼が生前一度だけ蜘蛛を助けたことを思い出した御釈迦様は
地獄の底へ蜘蛛の糸をたらし、極楽へ上がるチャンスを与えた。
カンダタは狂喜して糸を登り始めたが、その糸には他の多くの罪人も群がり、
糸が切れるのを恐れたカンダタが大声で「降りろ」と喚くと、糸はぷつりと切れ
カンダタは再び地獄の底へ真っ逆さまに落ちていったのだったーーー。
このように、カンダタの持つエゴイズムが自らの首を絞めることになった、というのが通説ですが
この「エゴイズム」を持っているのは、果たしてカンダタだけでしょうか?
・善人は天国へ昇り、悪人は地獄へ落ちる。
・些細なことでも、よい行いは必ず報われる。
・人を思いやれない者に情けはかけられない。
一般的に言われているこの作品の教訓はこんな感じ。
さて、このお話には本当にこんな教訓があるでしょうか?
前回の感想文はこちら。
御釈迦様の気まぐれ
ある朝、御釈迦様はぶらぶらと散歩をしています。
そして、蓮の葉の間からふと地獄の様子をご覧になった。
そしてたまたまカンダタの姿に目を留め、
「そういやこいつ生前、蜘蛛を踏みつけようとしてやっぱりやめてたな」と思い出し
いっちょ助けてやるか、と偶然その場にいた蜘蛛の糸を垂らすのです。
そう、これはすべて御釈迦様の気まぐれなんですね。
カンダタが良い行いをしていたから助けたのではなく、たまたまカンダタに目を留めた結果、彼の善行を思い出しただけ。
なんならただの暇つぶしです。だってぶらぶら散歩してたんだから。
だいたい、カンダタは生前、人殺し・放火・窃盗に手を染めていた大悪党です。
善い行いといえば、蜘蛛を踏みつけようとしたけどやっぱりやめたことだけ。これ、善行ですか?(笑)
カンダタのもとに糸がたらされたのは、本当にたまたま。運が良かっただけじゃん、と思いませんか?
むしろ不公平じゃないか、と。さすがにもっと善い行いしてる罪人いるだろ、と。
良い暇つぶしにされたカンダタ君
気まぐれな御釈迦様のお情けチャンスをものにできなかったカンダタ。
御釈迦様は極楽の蓮池のふちに立って、この一部始終をじっと見ていらっしゃいましたが、
やがて陀多が血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、悲しそうな御顔をなさりながら、
またぶらぶら御歩きになり始めました。
御釈迦様がカンダタを見つけたのは蓮の花が香る朝。
そして悲しそうな御顔でまたぶらぶらと歩き始めたのは、昼近くになってからでした。
つまり御釈迦様は午前中の間ずうっと、糸をよじ登るカンダタをご覧になっていたわけです。
御釈迦様、他にやることないのかと。やっぱり暇つぶしだったんじゃないか、と。(笑)
そう思うと、「悲しそうな御顔」も、カンダタが改心しなかったことに対するものというよりは
な~んだ落ちちゃったよ、つまんないの~
的なことなんじゃないかと思えてくる。(笑)
それぞれのエゴイズム
エゴイズムとは、「自分の利益を中心に考えて、他人の利益は考えない思考」のこと。
自分だけが助かろうとして他人を蹴落としたカンダタは、間違いなくエゴイズム。
カンダタに降ろされた糸に勝手にしがみついていたほかの罪人たちも、エゴイズム。
そして自分の気まぐれで人を振り回した御釈迦様もまた、同じ。(というより元凶)
この作品にはおそらく、絶対の正義なんて出てこない。
極楽があり、地獄があり、御釈迦様がいて、罪人がいる。
見た目に惑わされないで。ふたを開けてよくよく見たら、み~~んなおんなじ。
完璧な人なんていないし、だからこそ他者から与えられる裁きは平等ではないんだと。
実はそれが本当の教訓だったりして。なんて視点で読むのも面白いですよね。
こんなにシニカルな作品が子ども向けの絵本になってもっともらしい教訓がつけられているなんて、芥川自身が一番驚いているかもね。
それでは、また。
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