モモの読書感想文038~『蜜柑』芥川龍之介
ある曇った冬の夕暮れ。汽車に乗っている私の向かい側に乗ってきたのは貧しそうな薄汚い少女。
その汚らしい風貌にも、三等の切符を持ちながら二等の車両に乗り込んでくる無知さにも、すべてに嫌気がさした私は、憂鬱な気分に拍車がかかる。
トンネルに入ると、少女はおもむろに窓を開ける。煤すすが車内に充満する。
トンネルを抜けると踏切に三人の男の子が立っていて、少女は弟たちに向けて5,6個の蜜柑みかんを投げる。
曇り空に映る蜜柑に目を奪われた私は、憂鬱な気分が晴れていることに気づく。