モモの読書感想文006~『恋文の技術』森見登美彦
こんばんは。モモです。
毎年思いますが、夏って短いですね。どんどん陽が短くなってきました。
今回の読書感想文は・・・
『恋文の技術』 著:森見登美彦
森見登美彦さんの文章って、不思議なリズム感があって癖になります。ものすごく滑舌の良い人に朗読してほしい文章。たとえば小林賢太郎さんとか。
初めて森見さんの本を読んだのは、高校生のときでした。授業中にこっそり『四畳半神話大系』を読み、大学にはこんな人たちが生息しているのか…と思ったものですが、実際に進学してみたらそんな人たちは見当たりませんでした。もちろん。
でもどこかにはいたのでしょう、ひっそりとどこかに。
前回の感想文も読んでね。
あらすじ
京都の大学院から、遠く離れた実験所に飛ばされた男が一人。
無聊を慰めるべく、文通修業と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。文中で友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れるが、本当に想いを届けたい相手への手紙は、いつまでも書けずにいるのだった。
この作品は、書簡体小説です。
書簡、つまり手紙の内容が書き連ねられ、手紙を通して間接的にストーリーが進んでいきます。
本文には主人公(守田一郎)が送った手紙のみが時系列で記されており、その文章から相手の返信の内容をうかがい知り、ふたりのやりとりや関係性・背景などを想像する・・・という楽しみ方です。
違和感
序盤は楽しく、おもしろおかしく読んでいたのですが、途中からちょこっと違和を感じ始めました。
手紙って、自分が書いたものは送ってしまうから手元には残りませんよね。
通常、文通しているときに記録にも記憶にも残るのは「受け取った手紙」の方ですよね。
なのにこの小説には主人公が送った手紙だけが延々と記されている…。
不思議だなぁと思いませんか?
(書簡体小説ってそういうもんだよ、なんて野暮なことは言いっこなしです!)
ということで、この小説をどう解釈すればよいのか、どういうスタンスで読めば良いのか、についてゆるゆると考えてみました。
解釈① 守田一郎は変態である。
そもそも主人公はこの手紙を、本当に送っているのでしょうか?
書くだけ書いて、返信の内容を妄想して、また書くだけ書いて…と、自作自演の変態チックなことをしている可能性も否定できないのでは?
…と思いながらわくわくと読み進めていたのですが、第十一話「大文字山への招待状」で躓いてしまいました。
主人公以外の登場人物(全員、主人公の文通相手)同士が手紙のやりとりを始めてしまったことがわかったからです。
しかもその内容は、主人公とその相手が文通していたことをことごとく証明するような内容ばかり。
まるで、私がひねくれた読み方をしていたことが作者にばれてしまったみたいな気持ち。笑
ということでこの解釈はボツ。
解釈② 守田一郎の手紙を編纂している人がいる
古今和歌集は、紀貫之が主に編纂したと言われています。万葉集に選ばれなかった和歌を選び出してまとめたのです。
それと同じように、守田一郎が書いて方々へ送った手紙をかき集めて編纂した人がいる…と考えるのも、面白いかも。
これなら、解釈①で躓いた問題も解決です。
編纂者はやっぱり、森見さんかな。(作者ご本人ではなくて、作中に登場する方の森見さん。)
なんで作家本人が作中に出てくるんだろう、と思っていたのだけれど、書簡の編纂者として登場させたのかもしれません! それともただのナルシストかな。笑
面白かった
人の心の機微とか、無意識に抱く感情とかをこまかくしつこく言語化してある作品が好きです。だから私は純文学が好きです。
森見登美彦さんの作品は、純文学の要素もありながら、ユーモアいっぱいでテンポが良くて読みやすい。
キャラクターがはっきりしていてとっつきやすいから、読書が苦手な人にも読んでほしいなぁ。
そうそう、森見さんの作品でもう一つ、とっても好きな作品があります。
『走れメロス』 著:森見登美彦
『走れメロス』と言えば太宰治の超有名作品。教科書にも載っていますよね。
5つの純文学(作者ばらばら)を題材に、森見ワールド全開の全く新しい物語が作り上げられています。
これ、ほんとおもしろい。今度感想文書きたいなぁ。
5編とも、原作を読んでからの方が楽しめるのは間違いないのですが、逆に後から原作を読んでもとっつきやすくて良いかも。
純文学に苦手意識を持っている人にもおすすめしたいです!
Kindle版もありますよ。文庫持ってるのに買っちゃった(●^o^●)
Kindleめっちゃ良いです。
それでは、また♡
Next bookreport is…
お節介ですが、この小説には守田一郎の書いた手紙しか出てきませんよ (^^)
そうですね、おっしゃるとおりです。
誤解を招く書き方をしてしまったでしょうか、、、?