モモの読書感想文009~『真昼なのに昏い部屋』江國香織
こんばんは。モモです。
今回は、私のオアシス的作家・江國香織さんの作品です。
『真昼なのに昏い部屋』 著:江國香織
会社社長の夫・浩さんと暮らす美弥子さんは、家事もしっかりこなし「自分がきちんとしていると思えることが好き」な主婦。
大学の先生でアメリカ人のジョーンズさんは、小鳥のように純粋な美弥子さんに心ひかれ、二人は一緒に近所に出かけるようになる。
時を忘れる楽しいおしゃべり、名残惜しい別れ際に始まり、ふと気がつくとジョーンズさんのことばかり考えている美弥子さんがいた―――
江國さんの文章には、読み手を作品世界に惹きこむ力があります。
本を閉じる頃にはいつもぼうっとしてしまって、心ここにあらず、というかんじ。
空想の世界に逃げ込みたいときや、穏やかな気持ちになりたいときは必ず江國香織さんの作品に手が伸びるのです。
とくに90年代から2007年ころまでの作品は、文章から感情があふれてくるようで…
溺れながら読んでいるような気持ちになります。
『真昼なのに昏い部屋』もそうですが、逆に近年の作品は第三者の視点から書かれたものが多いせいか、客観的に冷静に読めるまさに「物語」のような作品が多い印象です。
今回は、この物語の主人公・美弥子さんの印象的な台詞をご紹介しながら感想をかいていきます。
前回の感想文はこちら。
私は転落したのかしら。でも、どこから?
宗教を信仰している人は、なにか良くないことをしてしまったとき、あるいは良い行いができなかったときに信仰対象の”目”を意識しますよね。
キリスト教ならイエス様、仏教ならブッダ様、神道なら神様でしょうか。
おそらくそれと同じように、美弥子さんは常に夫の浩さんの”目”を意識して生活しています。
一人でいるときも、浩さんから見て「立派な妻」でいられるようにふるまいます。
(家のすみずみまでぴかぴかに磨きたてて、家の草花に水をやって、スパイスからカレーを煮て……美弥子さんの家事スキルめっちゃ高い)
それは浩さんに支配されていることであると同時に庇護されているということでもあって、美弥子さんはそれを幸せだと感じています。
けれども次第にその”目”は、いつしかジョーンズさんのものに代わり、それを知った浩さんは激昂し、美弥子さんは家を飛び出します。
おそらくそこで「転落」は起こったのだと思います。
でも、はたして「どこから」転落したのか? ジョーンズさんにすっかり心を奪われている美弥子さんにはわかりません。
私、世界の外へでちゃったんだわ。
どこから転落したのかはわからない美弥子さんでしたが、ふとした瞬間に「世界」の外へでたことを認識します。
浩さんに庇護されていた、「まるで軍艦のような」家が、美弥子さんの世界のすべてだったのに。
ジョーンズさんは、そんな美弥子さんをしばしば「小鳥のよう」だと形容します。
でも、人妻は物を感じちゃいけないなんて法があるかしら。
浩さんを怒らせてしまった理由を考え、反省しようとした美弥子さんがたどり着いた疑問。
人妻だからって、夫の”目”に支配される必要はないと感じたのです。
江國さんの物語に出てくる女性はだいたいがものすごく自然に浮気か不倫をしているので(笑)、この一文は、なんだかとても新鮮でした。
やっぱり最後が・・・
第1回目の感想文で取り上げた『神様のボート』もそうでしたが、最後の最後、ラスト2行で読者はしれっと裏切られます。
感情をあげたりさげたりしながらどっぷり肩まで浸かってここまで読んできたのに、最後にすとんと置いてきぼりにされる感じ。本当に巧いよなぁ。
この裏切りにあったとき、あなたはジョーンズさんの本当の気持ちに共感できるでしょうか?
それとも「ジョーンズさんたら、そういう趣味があったのね…(^v^)」と思うでしょうか?笑
感想聞かせて下さいね。ちなみに私は後者でした。
次は何を読もうかな。
また次回もお楽しみに(●^o^●)
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