モモの読書感想文002前編~『鏡』村上春樹
こんばんは。モモです。
今回の読書感想文は・・・
『鏡』 著:村上春樹
この『カンガルー日和』は短編集です。
長編作品に比べて肩の力が抜けているというか、さらりと読めるのでおすすめ。
(とは言っても深く考え始めると結局は没頭できてしまいますが…こんな作品が書けるって素敵)
今回は、ここに収録されている『鏡』という短編作品について書いていきます。
前回の感想文はこちら。
はじめに
私のちいさいちいさい本棚の半分を占める村上春樹さん。(関係ないけど名前も爽やかでいいですよね。本棚に並べたくなる名前です。)
大好きな作家の一人です。
私は気に入った本をとにかくしつこく読み込むタイプなので、読んだページ数は多くても作品数は実はそれほど多くないと思います。
引っ越しのたびにたくさん本を手放しましたが、江國香織さんと村上春樹さんだけは1冊も手放すことなく持ち続けています。何度読んでも新鮮に面白いから。
あらすじ(Wikipediaより)
来客は順番にそれぞれ怖い体験談を語っていった。最後に家の主人である「僕」も話をすることになった。10年以上前の話だ。(ばっさり中略)
新潟県の小さな町にある中学校に夜警の仕事を得た。それはその仕事の見回りのときに起こった。
廊下のまん中あたりにある玄関で、「僕」は暗闇の中で何かの姿が見えたような気がする。木刀を握りなおし懐中電灯の光をかざすと、光を投げかけた先に「僕」がいた。つまり、鏡だった。煙草を3回くらい吹かしたあとで、奇妙なことに気づいた。鏡の中の僕は僕ではなかったのだ。
物語の主人公は「僕」。来客たちに、自分の怖い体験談を語りはじめます。
ちょうど百物語のようなイメージでしょうか。みんなで順番に怖い話をしていって
100話語り終えると本当にお化けが出る、というアレです。
大事なのは、語っているのは「僕」自身であること。これ、ポイントです。
「鏡」は何を意味している?
深夜の中学校の見回りをしていた「僕」が見つけた鏡には、「僕がそうあるべきではない形での僕」、すなわち「僕以外の僕」が映っています。
そして、彼はどうやら「僕」を支配しようとしている―――――。
これは、彼が「鏡」のこちら側に出てこようとしていた、というふうにも捉えられませんか?
つまり、彼らは「鏡」を隔てて向かい合い、「僕以外の僕」は「僕」を乗っ取り、「鏡」を介してこちら側の世界へ進出しようとしていた。そう考えると、この「鏡」はあちら側とこちら側を繋ぐ出入り口のメタファーになっているんですね。鏡の国のアリスみたいな。
しかも外では、プールの仕切り戸が「頭の狂った人間が首を振ったり肯いたりするみたいな感じで」ばたんばたんと開閉している…
「そうあるべきだ」と「そうあるべきではない」という否定と肯定の境界がひどくあいまいになっている。どちらが本物の「僕」なのか?
今にもどちらとも見分けがつかなくなってしまうかもしれないという危うさを感じませんか?
これは「僕以外の僕」が「僕」を支配しようとしている場面と対になっていると考えられます。
そもそも「僕以外の僕」ってどういうこと?
「僕以外の僕」というこの言葉自体が言語矛盾ですね。
「僕以外の僕」とは「違う世界に存在する僕」のこと、というのが私の解釈です。
なぜなら、“「僕」ではないけれど「僕」である”ということは、人間そのものが別物だということではなく、人間の状態が異なっているのだと考えられるから。
たとえば、現在に並行して存在する他の世界(いわゆるパラレルワールド)に存在している自分。あのとき別の選択をしていた自分は、今の自分とは似て非なるもの。これはまさしく「僕以外の僕」だと言えるのではないかなぁ。
「鏡」が隔てているのは…
では、「僕」が存在している世界と、「僕以外の僕」が存在している世界(パラレルワールド)には、一体どんな関係性があるのでしょうか?
ここでは便宜的に、“「僕」が存在している世界”をA、“「僕以外の僕」が存在している世界”をBとして考えていくことにします。
AとBを隔てているのが「鏡」ということは、AとBが反転しているものだと考えるのが自然ですね。すべてが反転している、真逆の世界。
Aに存在する「僕」とBに存在する「僕以外の僕」は、寸分たがわぬ外見をしていて、まったく同じ行動をとっている。だって鏡だから。
けれどひとつだけ、決定的な違いがある。
それは、肉体の有無。
「僕」は肉体を持って存在しているけれど、「僕以外の僕」は肉体を持ちません。
だってただの像だから。しょせん鏡の中の「僕」だから。
Bの「僕以外の僕」は、Aに生きる「僕」を憎んでいます。それも、「心の底から憎んで」います。
なぜでしょう? どうして自分のことをそんなに憎む必要があるのでしょうか。
つづきは後編で
なんだか思ったよりも楽しくてどんどん長くなってきました…
ので、続きは後編にしますね。
「僕以外の僕」は何故「僕」を憎んでいるのか?
そもそも「僕以外の僕」って何者なの? 目的は何?
でも…大事なのは、語っているのは「僕」自身であること。
これ、ポイントですよね。(リマインド)
この辺も次回書きます。お楽しみに!
それでは、また。
Next book report is…
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