モモの読書感想文004~『砂の女』安部公房

こんばんは。モモです。

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さてさて、4回目の読書感想文です。

今回の読書感想文は・・・

『砂の女』 著:安部公房

『砂の女』 著:安部公房

また安部公房かい!

でも安部公房と言えばこの作品に触れずにはいられないと思うのです。

『棒』に触れておきながら『砂の女』をスルーするわけには、いかないわけです。

あらすじ

男は、連休を利用して新種の昆虫を探しに海辺の部落に訪れる。砂の穴の中の女の家に一泊して帰るつもりだったが、部落の人間たちの策略にまんまとはまり、その穴から抜け出せなくなってしまう。女は、砂によって家族を亡くした未亡人であった。

男は女と肉体関係を持ち、徐々に夫婦のような関係になっていく。男は、はじめのうちは部落の人間を敵対視していたが、時間がたつにつれてその気持ちも薄くなり、最終的には部落に残ることを選んだのだった。

初めてこの作品を読んだ時、のどが渇いて渇いて仕方なかった。

主人公の男が閉じ込められた、砂に支配されているこの部落の最大の関心事は「水」。

常に水不足で、男ののどはいつも渇いている。

いくら戸を閉め切っても入り込んでくる砂、汗をかいた肌に膜をはるようにはりつく砂…

読後感は最悪でした。

作品全体に漂うじめじめした湿度と砂がもたらす渇き。

初めて読んだのは大学生の時でしたが、もう二度と読まないだろうな…と思ったことを憶えています。今回はかなり流し読みしました(笑)

でも裏を返せば、それだけの表現力とテキストに引き込む文章力・構成力があるということ。安部公房すごいです。

男が砂地に留まった理由

砂の変化は、同時に彼の変化でもあった。彼は、砂の中から、砂といっしょに、もう一人の自分をひろい出してきたのかもしれなかった

男は、はじめこそ砂地からの脱出を試み、それを妨害する部落の人間を恨んでいましたが

徐々に心境が変化していきます。

そのきっかけとなったのが、「溜水装置」。

鳥を捕まえようとして作ったものでしたが、思いがけず夜露によって水が溜まる仕組みになっていたのです。

考えてみれば、彼の心は、溜水装置のことを誰かに話したいという欲望で、はちきれそうになっていた。話すとなれば、ここの部落のもの以上の聞き手は、まずありえまい。

それまでは、男は砂地に閉じ込められる前の「灰色の日常」への回帰を強く望んでいました。

何度失敗してもあきらめず脱出を試みました。

しかし一週間、ひと月と時間がたつにつれて、その「灰色の日常」と現在の砂の女との生活は、男にとってもはや同等の価値のものになっていったのではないかと私は考えます。

砂地で生活していく上でとりわけ必要不可欠であるにもかかわらず配給制であった水は、部落の人間にとっては男に対する切り札のようなものでした。

男が抵抗したら、水の配給を止め、男が渇きに耐えられなくなり白旗を振るのを待てばよいのです。

男にとってこれはゆゆしき問題であり、砂地での生活における最大の関心事でした。

つまり、男は溜水装置を得たことで、部落の人間と対等に渡り合えるようになったのです。

この一文は、彼が部落の人間を敵対視することをやめ、砂地でともに生きていくつもりがあるということを暗示しているように思えます。

幸福な生活とは

逃げるてだては、またその翌日にでも考えればいいことである。

作品最後の一文です。

この地を出たい、という積極的な想いが男にはもう残っていないことが感じられます。

男は、砂地での生活は不自由ばかりだと感じていました。

でも、砂地に来る前の「灰色の日常」においても、実は不自由ばかりだったのでは?

職場では同僚から干渉され、家にはあまり夫婦仲の良くない妻がいる。

それにひきかえ現在は、おとなしく献身的な妻がおり、その妻とは「ラジオを買う」という共通の目標に向けて協力しあうことができる。

砂をかく仕事さえ怠らなければ、給金も配給ももらえる。

おまけに今や、溜水装置を研究するという趣味までできたのです。

「幸福な生活を送っていくためには、他に何が必要だというのか?」

男がいずれそう思うようになるであろうことが想像できます。

住めば都って、まさにこのこと。

この作品のテーマ

この作品のテーマは、砂の流動性と人間の執着性についてだと私は考えます。

砂は一粒一粒が非常に小さく、形がないようなものです。

絶えず流動し、ひとところに留まりません。

そして人間のみならず、あらゆる生物はそういう性質を持った砂には絶対に敵わないのです。なにしろ実体がないのだから、抵抗しようがない。

それにひきかえ人間は、家を持ち、家族を持ち、同じ職場に何年も通い、単調な毎日を繰り返す生き物です。場所に執着し、持ち物に執着し、人に執着し、日々の生活サイクルにも執着する。

両者はこの作品の中で対極に位置するものとして描かれています。そしてそのことが一番顕著に表れているのが、女と砂の関係です。

女は毎日同じサイクルで生活し、時間になると毎日同じように砂をかく。砂の存在に長いあいだ苦しめられているにもかかわらず、女は逃げ出そうとしません。そればかりか、それを「愛郷精神」だと言いきります。

また、女は外の世界をまったくもって知りません。自分の生活がどのようなものなのかを比較できる対象を持たないのです。

ひとところに留まり続けようとする女と、それを流動しながら飲み込んでいく砂の対比が、細かな描写でつづられています。

読み手まで砂地に引きずり込まれるような…

すごく有名ですし、面白いですけれど、夏に読むにはちょっと暑苦しいかな!

お部屋のクーラーを効かせて、読んでくださいね(笑)

それでは、また。

Next bookreport is…

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2件のピンバック

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