モモの読書感想文002後編~『鏡』村上春樹

 

こんばんは。モモです。

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一体誰に需要があるのかわからないこの読書感想文、めげずに書いていきます。

 

今回の読書感想文は・・・

『鏡』 著:村上春樹

 

 

村上春樹さんの短編集『カンガルー日和』に収録されている

『鏡』という作品についての感想文、後編です。

 

前編はこちら。

 

「僕以外の僕」はなぜ「僕」を憎んでいる?

(ここでは便宜的に、“「僕」が存在している世界”をA、“「僕以外の僕」が存在している世界”をBとして考えています。)

Bの「僕以外の僕」は、Aに生きる「僕」を憎んでいます。それも、「心の底から憎んで」います。

 

なぜでしょう? どうして自分のことをそんなに憎む必要があるのでしょうか。

 

答えは、「僕」の発言の中にあります。

 

「もう一度人生をやりなおすとしても、たぶん同じことをやっているだろうね。」

「でもそこまで手は抜かなかったよ。」

「そういうのって一度ごまかすと、その先何度もごまかすことになるからね。」

と本文中にもあるように、「僕」は、そうあるべきである形での僕にこだわっているということがわかります。

そして、実際にそのような「僕」を生きてきた。逆に言えば、そうあるべきではない形での僕を否定して生きてきたのです。

このことから、Bに存在する「僕以外の僕」を殺したのは、Aに生きる「僕」自身なのだと推測できますね。

だから「僕以外の僕」は、「僕」を心の底から憎んでいる…のではないかな。

 

結局、鏡は無かった!?

鏡の中の「僕以外の僕」に危害を加えられそうになった「僕」は、持っていた木刀で鏡をたたき割り、事なきを得ます。

そして翌朝、その鏡があった場所に行ってみると…

 

なんと、そこに鏡は無かった

 

そもそものはじめから無かったのでしょうか? あれはただの夢だったのでしょうか?

 

私は違うと思います。鏡は、閉じてしまったのです。

前編で「「鏡」はあちら側とこちら側を繋ぐ出入り口のメタファーになっている」と書きました。

出入り口が現れ、そして閉じられただけだということです。

あれから10年以上経った今も「僕」の家には鏡は1枚も無い、と「僕」が述べていることから、「僕」はこのことに気付いていると考えられます。

鏡があちら側の世界(死後の世界?)との出入り口だったということに気付いた「僕」は、それから鏡を見ることができなくなってしまったのです。

 

まさかのオチ

この体験談は、「でも今夜はみんなが順番にそれぞれ怖い体験談を聞かせてくれたわけだし、主人である僕が最後に何も話さずに場を閉じるというわけにもいかない。それで、僕も話すことにする。」とあるように、人に向けて語られたものです。

 

しかしこの作品のなかには、「僕」以外の存在は認められません。

なんの記述もない。一貫して一人称で語られているのです。

 

前編でも書きましたが、大事なのは、語っているのは「僕」自身であること。

 

一人称で書かれているということは、この話が真実である保証はないということなんです。

もしかするとこの話自体が虚構であるかもしれない。

一人称というのは、こういった危険をはらんだ書き方なのです。それをあえて選んで書いている、ここが最大のポイントかなと思います。

この作品を最後まで読んだとき、ゾッとする人もいれば、すべてが冗談だとわかって笑ってしまう人もいるでしょう。読者によって捉え方が180度変わってしまう作品です。うううううう、おもしろい。

 

まとめ

この作品の主題は、「無意識に抑圧しているもう一人の自分の存在の怖さ」だと私は考えます。

 

人間にとって自分自身以上に怖いものがこの世にあるだろうかってね。

これは、改稿時に付加された一文です。

これが一番重要な箇所です。この一文のためにこの作品が書かれたと言っても過言ではないと思います。

普段、私たちが思考したり、何かを感じたりしている「自分」の他に、無意識のうちに存在している「自分」がいる。

私たちは知らず知らずのうちに、その「もう一人の自分」を抑圧しながら生きているのです。

そして、ふとした瞬間に、その「もう一人の自分」が圧倒的な憎しみをもって「自分」を支配しようとするかもしれない。そんな人間の危うさをこの作品は表していると考えます。

 

「こうあるべき」「こう生きるべき」

一つの考え方に縛られてはいけませんね。

自分の思うままに、やりたいことを、自由に! そういう生き方ができていないと、あなたももう一人の自分に恨まれちゃうかも?

 

それでは、また。

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Next book report is…

2件のコメント

  • 我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である。
    我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。
    自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根元だ。
    今ここにある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはいけない。

    神様のボート気になってるのでそのうち読みます(●^o^●)

    • わあ(●^o^●)
      私の大好きな小津が出てくるアレですね!
      おぎやはぎの矢作さんのイメージだったのにノイタミナで妖怪にされてて不満でした。

      神様のボート、是非読んでください。感想教えてほしいです。

4件のピンバック

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